様々な御祭神が合祀される、町の「郷社」
町の北東の字(あざな)を「艮(こん)」という所、今もなお大樹が茂る社地に鎮座する諏訪神社は慶安元年(1648)創立と伝えられています。御祭神は、建御名方大神(たけみなかたのおおかみ)、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、三吉大神(みよしのおおかみ)、宇気母智神(うけもちのかみ)、蛭児命(ひるこのみこと)です。
旧社格では郷社でした。明治6年に指定されています。明治11年に本殿を新築し現在地に移転しています。この際にこの場所にあった三吉神社を合祀した様です。明治22年には神明社・西宮神社・豊受神社(七面山の稲荷社?)を合祀しています。角間川の特徴を表すように、農業、産業、商業、漁業など多彩なご祭神がお祀りされています。昭和21年、GHQの神道指令により社格制度は廃止されています。例祭日は8月21日で、神輿が愛宕神社を経由し町内を練り歩きます。2月1日には角間川の厄年を迎えた男女が御祓いを受けます。
ご祭神
- 建御名方大神(たけみなかたのおおかみ):諏訪大社の主祭神、武神・農耕神。
- 天照大御神(あまてらすおおみかみ):伊勢神宮内宮で祀られる皇室の祖神、神明社の主祭神。
- 三吉大神(みよしのおおかみ):秋田県特有の霊神、鉱山や産業の神。
- 宇気母智神(うけもちのかみ、保食神):食物・五穀の神。豊受神社の主祭神。
- 蛭児命(ひるこのみこと、蛭子大神):西宮神社の御祭神。えびす(戎・恵比寿)とも呼ばれる、えびす信仰の神。商売繁盛や漁業守護の神。
(上記は、秋田県神社庁ホームページ より参照、令和7年8月19日閲) - 菅江真澄の記録に「内外両太神宮」として「上祖の斎ひまつりしみやところといへり」とありますので、そこに天照大御神と宇気母智神がお祀りされていたか、または神明社と豊受神社がそれぞれあったのか、どちらかかと思われます。
- 神社正面の由緒書き看板には門ノ目の「火産霊神社」の「軻遇突智神(かぐつちのかみ)」が合祀とあります。確認しますと、角間川町字旭森(門の目地区の南の際、大雄野中と接する区域)には現在も火産霊神社が確認できます。よって、以下のように推察します。
菅江真澄の雪出羽路には、門ノ目村には不動明王堂があると記録されています。現在の門の目集落がある所に不動明王堂は見当たらないのですが、地区の南の際、旧大雄村野中との隣接地に三古狐神社があり、その境内に火産霊神の祠、不動尊の祠があるようです。また、秋田県神社庁のホームページには、秋田市柳田の火産霊神社はご祭神が不動明王と蔵王権現で、明治時代より火産霊神社として祀られる、という事例が確認できます。確かな記録は確認できていませんが、門ノ目村の不動明王堂が明治以降に合祀されたとすれば、仏教の不動明王が日本神話の火産霊神(ほむすびのかみ、迦具土神(かぐつちのかみ)とも)とされたのではないでしょうか。合祀されているとすれば、このご祭神かと思われます。
例祭
8月20日:夕方より宵宮祭、8月21日:例祭。朝より神事を執り行い、夕方まで一日かけて神輿が町内を練り歩く神輿渡御を行います。平成の初め頃までは、宵宮の日には本通りに屋台が立ち並び、町内の各所で様々な余興も行われるなど、近隣からも人が訪れる程の賑わいがありました。
艮(こん)という地名
角間川では「こん」と読みます。京都府下京区には艮町(うしとらちょう)があります。「艮(うしとら)」は、十二支の方位で北東を意味する言葉です。この丑寅の方角は、日本では古来より鬼門としていますが、北東の方角に神社を置くことで鬼門を鎮め、家や土地を守ってくれると考えられていました。艮(こん)という字は「丑寅」という方位を意識してのことですし、それもあって町の北東に諏訪神社を置いたとも考えられます。
近代社格制度
近代社格制度(きんだいしゃかくせいど)とは、明治政府が明治4年(1871年)に制定した、全国の神社を等級付け(格付け、官社と緒社の府県社・郷社・村社)する制度です。これは、国が神社を体系的に管理するための制度でした。昭和20年(1945)12月のGHQ神道指令による神社の国家管理廃止に伴い、昭和21年(1946)2月に近代社格制度も廃止されています。神社名を刻んだ標柱の上の方に社格が彫ってあったものをセメント等で埋めたり、切り詰めてしまったりした標柱が散見されるのはこのためです。また、現在でも「旧社格」などの名称で神社の格を表す目安とされる場合があります。角間川の諏訪神社の場合も、このように約80年前に制度が廃止された後でも、通称として「郷社」という呼び方が残っている例です。
参考文献
- 秋田叢書刊行会編「雪出羽道・上」『秋田叢書第5巻』秋田叢書刊行会、1933年、pp.104-113。
- 大曲市昔を語る会連絡協議会『大曲市の歴史散歩』大曲市・大曲市昔を語る会連絡協議会、1977年、pp.100-119。
- ホームページ《秋田神社庁、秋田の神社検索ー諏訪神社》令和7年8月19日閲覧。







